夫婦問題カウンセラーの三枝照子です。はじめにお伝えしておきたいことがあります。
離婚はいつでもできます。迷いがあるならば、まずは猶予期間としての別居を考えてみてください。
最近では結婚の形もいろいろです。仕事の関係ではじめから別居婚を選ぶカップルもあれば、熟年になってからお互いの自由を尊重するために別居婚を選ぶ方もいます。
この記事では、夫婦が別居するメリットとデメリット、さらには別居に際して、してはいけないことについて詳しく解説します。夫婦が別居する動機や目的、心理的・実務面でのメリットとデメリットを具体的に紹介し、成功事例も交えながら包括的に説明します。別居生活を検討している方や現在別居中の方に役立つ情報を提供し、関係を上手にリセットしつつ個別の課題に対処する方法を提示します。明確なルールの設立やコミュニケーションの重要性など、別居を成功させるためのポイントも詳しく取り上げます。
夫婦別居の背景と目的
夫婦別居の動機と成功のコツ
仕事の都合による別居
転勤や単身赴任など、仕事の都合で別居を選ばざるを得ない場合があります。女性活躍を目指すこれからの世の中では、キャリアの成長や経済的な理由も含まれることが多くなります。特に大企業の社員や公務員は、何年かごとに勤務地が変わることが多く、家族も同意の上で別居生活を余儀なくされることがしばしばあります。それらが予測される場合には、キャリア形成と家庭との両立を考えて、事前準備が必要です。
この場合には、夫婦で話し合い、長期的なファミリーキャリアプランを大まかに作っておくことをお勧めします。
まず、夫、または妻のキャリア形成のための転勤や昇進試験、資格試験が、いつ頃なのかを書き出します。お子さんがあれば、子どもの習い事、入学・卒業など、お金のかかるタイミングを把握します。また、家の購入時期など、お金とキャリアを中心として長期の計画を立てておくと、お互いのタイミングや状況を理解して、譲歩することができるでしょう。
生活スタイルの違いを認め合う別居
夫婦間での生活リズムや趣味が異なり、それがストレスの原因となる場合に、一時的または長期的に別居することがあります。例えば、夜勤が多い仕事の夫と朝型の仕事をしている妻では、日常の生活リズムが合わないため、別居が一つの解決策となることがあります。
ちなみに筆者の両親は、50年以上別居婚でした。東京で個人事業を行う母と、茨城県で個人事業を行う父。当初は、仕事の都合により別居と母は申しておりまして、私たち子どもは東京の母の元で育ちました。子どもから見て特に仲が悪いという様子は見えず、年に数回は、父親が東京の家に帰ってきて数日間を過ごしました。また、子どもの夏休み、冬休みなどの長期休暇には、茨城の父の家で過ごすなど、都会と田舎の暮らしの両方を味わうことができました。内田裕也&樹木希林夫婦の別居婚よりもずっと前からのことでしたが、母も当時から経済的に独立しており、今から考えますと、当時としてはとても珍しい結婚のスタイルだったはずです。
大人になってから、母に当時の事情を聴いてみると、それなりに夫婦の間ではいろいろな感情のぶつかり合いはあったようですが、私が子ども時代に両親の夫婦喧嘩を見た記憶は一回のみ、父親と一緒に暮らしていないことを子どもとして、寂しさはあったものの、いつでも電話を出来ましたし強く不足を感じたことはなかったと思います。むしろ、たまにしか会えない父親が神格化する(!)場合もあったように思います。(笑)父母が別居することでお互いの感情的なぶつかり合いを避け、円満でいられるならば、それで良かったのではないかと思っています。父は数年前に他界しましたが、母は高齢となっても、東京から父の入院先の茨城へ通い、父を見送りました。
1つ注意すべき点を挙げるとすれば、子どもが思春期に差し掛かる頃には、どうしても親に対しての見方が厳しくなりますので、その時期の夫婦のコミュニケーションは緊密に行う必要があります。
一時的な距離をとるための別居
関係が悪化していると感じたとき、ご夫婦が冷静になっていただくために一定期間の別居をおすすめすることがあります。これは感情の冷却期間を設け、再び良好な関係に戻るための時間と空間を提供するためです。
離婚はいつでもできます。
例えば、結婚して間もなくお互いの性格の不一致で関係がうまく作れない場合、再婚で相手のお子さんとの関係構築がうまくいかない場合には、短期間別居して、お互いの必要性、結婚のメリット、デメリットを感じてみることで修復に向かうケースもあります。
また、ご夫婦のうち、どちらかが浮気をしてお互いの関係を冷静に考えることができない場合など、逆上してすぐに離婚してしまうのではなく、冷却の期間を経て、今後のことを考える必要があります。不貞行為は相手の心を殺すほどに、重大な傷を負わせてしまうことは否めません。けれども、お互いに気持ちが残っている場合には、一旦物理的に離れて、自分の気持ちを確かめる期間があっても良いでしょう。
これらの場合は、期間を定めておくことが大切になります。長くても半年〜1年くらい、お互いに連絡を取り合うことを条件に別居してみることもあり、と考えてみてください。
夫婦別居の目的
目的 | 説明 |
---|---|
関係のリセット | 日常生活の中で発生するストレスやトラブルから距離を置くことで、関係のリセットを図ることが目的です。これは、新しい生活環境で気持ちを刷新し、再び良好な関係に戻るための重要なステップとなります。 |
自分自身の時間を持つ | 別居することで自分自身だけの時間を確保し、自己啓発や趣味に時間を費やすことが可能になります。相手に振り回されることから離れ、自分自身がどうしたいのか、自分自身を向上させるための貴重な時間となります。まずは、自分を大切にすることを優先し、それから相手との関係性を再構築することが大切で、この時期には、専門家のカウンセリングやコーチングを定期的に受け、自己成長を図ることを意識されると良い方向に転換できるでしょう。また、そうした時間が増えることで、再会した際に新たな話題が提供され、夫婦間の会話が豊かになることも期待できます。 |
夫婦別居のメリット
心理的メリット
ストレスの軽減
日常的に夫婦の生活の中でストレスを感じているとすれば、夫婦別居をすることで、ストレスの一部が軽減されることがあります。特に、生活スタイルや価値観の違いからくる摩擦を減らすことで、お互いを支配しようとせず尊重することができるでしょう。個々の空間を持つことにより、物理的にもストレスが減少することで、心の余裕がもたらされる場合もあるでしょう。子どもの目の前で喧嘩を繰り返したり、イライラを子どもにぶつけるよりは、別居した方がマシという選択肢もあるかと思います。
個人の自由時間の確保
子どもがいない場合には、別居により個人の自由時間が増え、自分自身の趣味や興味に集中することができます。これにより、自己成長やリフレッシュの時間を得ることで、自分と相手の関係性を冷静に見つめなおすことができるでしょう。自由に過ごせる時間の中で、新しいスキルの習得や、友人と過ごす時間が増えることで、社会的なつながりも強化されます。まだ若いご夫婦で、夫婦の間に諍いが起きている場合には、お互いを冷静に見直す期間として、一定期間の別居が修復に向けての転換点になることも少なくありません。
実務面のメリット
ライフスタイルの調整
例えば、朝型・夜型の違いなどライフスタイルの違いが問題になっている場合には、別居することで、夫婦それぞれが自分の最適な環境での生活を維持できるため、相手の生活リズムに合わせるストレスが軽減されます。ライフスタイルの独立性が確保されることで、相手に過度に期待したりコントロールしたりすることをやめ、夫婦といえどもお互いの距離感を大切にした上で、関係性を作ることができるならば、別居婚は夫婦のスタイルとして成立するでしょう。子育てが終わった熟年のご夫婦の間でも、別居婚を選択することがお互いの幸せ感につながることもあります。
経済的メリット
一見、別居は追加のコストがかかるように思えますが、夫婦共働きの場合には、稼ぎ手が異なる場所での仕事に専念できるため、収入の増加やキャリアの継続にプラスに転じる可能性もあります。女性活躍の時代となっていきますし、管理職として活躍する女性にとっては、経済的メリットも大きいでしょう。
金沢大学ダイバーシティー推進機構の調査によると、現在パートナーがいない人への調査で、「パートナーができた場合に同居を望むか」という質問にYesと答えた人が半分程度になっています。多様性が認められる今後の社会では長期的な別居婚という夫婦の在り方も増えていくのではないかと思います。仕事でキャリアを積み、自分のライフスタイルを確立した女性が、結婚することで相手の生活スタイルに合わせることが自分の生活の質を落とすことになると考える場合には、別居婚という選択肢もありだと思います。そのためには、社会の理解とサポート体勢を整えてゆくことが必須です。
夫婦別居のデメリット
心理的デメリット
キャリア形成のための長期別居ではなく、夫婦関係を調整するために別居する場合には、以下のことに注意すると良いでしょう。
孤独感
別居することで、配偶者と日常的に接する機会が減少し、孤独感を感じることもあります。これは特に長期間の別居の場合に顕著で、精神的な健康にも悪影響を及ぼす場合もあります。日本人の場合、そうした孤独感を「私が選んだから」「我慢しなければ」と押さえ込んでしまうことがありますが、マイナスな思考に長く浸っていることで社会との繋がりが希薄になり、負のループに陥らないために、このような時期こそ、カウンセリングを上手に利用していただきたいところです。
さらに、地域のコミュニティ活動や趣味のサークルに参加することで、新たな人間関係を築くことも有効です。
相談窓口 | 電話番号 | 時間帯 | 備考 |
---|---|---|---|
厚労省 電話相談窓口 |
24時間対応 | 詳細はこちら | |
いのちの電話 | 0570-783-556 | 24時間対応 | 詳細はこちら |
TELL(外国人向け相談窓口) | 03-5774-0992 | 月~金 9:00~21:00 土 9:00~17:00 |
英語対応可 詳細はこちら |
コミュニケーションの欠如
別居によって、パートナーとの言葉や行動を通じたコミュニケーションが減ります。このコミュニケーション不足が原因で誤解が生じたり、問題の解決が遅れることが多くなります。また、日常生活の中での小さなことが大きな問題に発展するリスクもあります。
それを避けるために、別居前には、以下の取り決めをしておくと良いでしょう。
- 別居の期間を定める
- ラインなどのコミュニケーションツールを使って、お互いの状況を伝え合う(子どもがいる場合には特に必要)
- 定期的に会う約束をする
特に問題解決の際には、お互いの理解を深めるためのカウンセリングやファシリテーションの利用が有効です。カウンセリングを通じて、お互いの気持ちや意見を正確に伝えることができる環境を整えることが重要です。
実務面のデメリット
家計の負担増加
別居により、住居費や生活費が二重にかかることになり、家計の負担が増加します。例えば、家賃、水道光熱費、食費などの様々なコストが重なるため、経済的な計画をしっかりと立てる必要があります。
費用項目 | 一緒に住む場合 | 別居する場合 |
---|---|---|
住居費 | 1軒分 | 2軒分 |
生活費 | 共有 | 分割 |
光熱費 | 共有 | 分割 |
別居生活では、予想外の出費が発生することも考えられるため、非常時のための資金を準備しておくことも重要です。また、適切な家計管理ツールを利用して、収支を詳しく把握し、無駄な出費を抑えるように心がけることも有効です。夫婦別居の場合には、婚姻費用の分担請求ができますので、家庭裁判所の婚姻費用算定表を参考に生活費の分担を話し合うと良いでしょう。二人の間でうまく調整ができない場合には、家庭裁判所に婚姻費用分担の調停を申し立てることもできます。
子育ての困難さ
日本では、夫婦の別居や離婚によって子どもが受ける心的影響についての研究やサポートについての社会的な考え方まだ確立されていない部分があります。
夫婦が別居すると、子育ての負担が一人に集中するため、育児の難易度が高まります。同時に、子どもが片方の親と離れて過ごすことにより、心理的な影響を受けることがあります。夫婦別居や離婚の場合、大変難しいことではありますが、パートナーの悪口を子どもに言わない、ということを鉄則にしてもらいたいと思っています。別居、離婚をするからこそ、子どもを囲んで、パートナーとの役割分担をしっかり行うべきです。
別居や離婚後、子どもと同居する親が、パートナーに子どもを会わせることを拒みたい気持ちもわからなくはないですが、夫婦の関係と、親子の関係は別物です。子どもの気持ちに立って、将来の人格形成を踏まえて冷静に考えることが必要です。子どもの面会交流をサポートしてくれる(一社)びじっとは、お子さんが他方の親に面会交流する場合に送り迎えを確実に行ってくれるなど、親身になって考えてくれる組織です。面会交流サポートを利用することで、子どもが暴力やDV受けるのではないか、帰してもらえなくなるのではないか、といった心配をなくすことができます。
さらに、子どもの心理的な状態を常にチェックし、状況に応じて専門家の助言を受けることも重要です。学校のカウンセラーや地域の育児相談所など、外部リソースを活用することで、育児の負担を軽減できます。各自治体の子ども家庭支援センターなどで情報を集めてみましょう。
もちろん、ひとり親でもしっかりお子さんを育てられる例もありますので、こちらの記事も参考になさってください。
朝日新聞『2人の息子を東大に シングルマザーが大切にした「ルーティン」子育てとは?』
してはいけないこと
明確なルールを設けずに別居を始めない
夫婦別居を成功させるためには、双方が納得したルールを設けることが重要です。明確なルールがないと誤解や不満が生じやすく、関係が悪化するリスクがあります。
- 訪問頻度の取り決め
- 家計の負担分担
- 育児の役割分担
- お互いの連絡方法を決めておく
- 別居の期間
契約書のように文書で取り決めをしておくと良いでしょう。
訪問頻度の取り決め
訪問頻度を事前に取り決めることで、不満や誤解を避けることができます。例えば、週末ごと、月に一度など具体的な頻度を決めることが大切です。夫婦が会う頻度、子どもを含めて会うのか、なども決めておきましょう。
家計の負担分担
家計の負担分担についても明確にすることが必要です。片方に過度な負担がかかることを避けるために、収入に応じた分担方法を話し合うと良いでしょう。共働き夫婦の場合、夫が生活費を出し、妻が貯金などをしているケースでは、妻が貯金した分は夫婦の共有財産と考えるのが良いでしょう。
育児や家事の役割分担
別居中でも育児や家事の役割分担を明確にすることで、お互いの負担を軽減できます。具体的な役割分担を決め、書面にしておくことが望ましいです。
コミュニケーションを怠らない
別居期間中でも定期的なコミュニケーションは欠かせません。互いの気持ちや状況を確認することで信頼関係を維持できます。
- 定期的な電話やビデオ通話。お子さんの成長の様子などは、必ず伝えましょう。
- メッセージアプリでの連絡
- 面会時間の確保
円滑なコミュニケーションのためのヒントとして、心理学者やカウンセラーのアドバイスを参考にするのも良いでしょう。別居期間こそ、夫婦修復のためのターニングポイントになります。夫婦の間に問題があるということは、これを解決して良い方向に転換できるタイミングでもあるのです。これを学びの期間をして活かしていくために、専門家の知識を利用することが有効です。
定期的な電話やビデオ通話
定期的な電話やビデオ通話を行い、互いの状況や気持ちを確認することが重要です。これにより、お互いの安心感を得ることができます。
メッセージアプリでの連絡
日常的な連絡手段としてメッセージアプリを活用するのも効果的です。日々のちょっとしたことでも連絡を取り合うことで、親密さを保てます。
面会時間の確保
定期的な面会時間を確保し、直接会うことで信頼関係を強化します。短期間でも顔を合わせることで、安心感が生まれます。
第三者の意見に過度に依存することはやめましょう
第三者の意見やアドバイスを参考にすることは有益ですが、過度に依存することは避けるべきです。自分たちで納得できる解決策を見つけることが重要です。
- 専門家の意見を取り入れる
- 家族や友人のアドバイスにも耳を傾ける必要はありますが、過度に依存してはなりません。パートナーとの関係改善をしたいのならば、自分の親ではなく、パートナーの親に相談をすることが有効です。
【関連記事】
→この人に、夫婦の問題を相談してはいけない!(自分の親編)②
最終的な判断は、夫婦で行うものです。自分の親に相談することで、親の感情や思いを巻き込み、家vs家の闘いになってしまい、夫婦の関係が第三者によってこじれてしまうことも少なくありません。自分の親に相談するのは、夫婦の決意がしっかり固まってからにするのが賢明です。
専門家の意見を取り入れる
夫婦問題カウンセラーは多くのケースを経験していますので、意見を取り入れることで、修復するにせよ離婚になるにせよ、より良い解決策を見つけられます。例えば、カウンセリングの専門サイトこちらを参考にすることができます。三枝照子へのご相談は、こちらからお問い合わせください。
ポイント | 詳細 |
---|---|
明確なルールの設定 | 訪問頻度や家計の負担分担など具体的な取り決めを行う |
コミュニケーションの維持 | 定期的な連絡や面会を通じて信頼関係を保つ |
第三者の意見を参考にする | 専門家や家族の意見を取り入れつつ、最終判断は夫婦間で行う |
実際の夫婦の成功例
円満な別居が成功した例が存在します。以下に具体例を紹介します。
夫婦 | 背景情報 | 成功ポイント |
---|---|---|
A夫婦 | 熟年ご夫婦。子育てが終わってから奥様の仕事が本格化し、出張も増えた。ご主人の定年を機に円満別居。定期的に奥様がご主人の家に帰るようにしている。年に一度は、二人で旅行に行くことを約束している。 | 生活スタイルの違いをリスペクトしつつ、定期的に会うためのスケジュール作成 |
B夫婦 | 子供の教育方針が異なっており、お子さんの登校拒否が続いた。一定期間を決めて、母とお子さんとで地方の実家へ戻り、一定期間を決めて別居。お互いを見つめなす期間をとり、お子さんが落ち着いた時点で、同居に戻ることができた。 | 双方が協力して子供に最良の環境を提供することを重視 |
まとめ
夫婦別居にはさまざまなメリットとデメリットが存在します。メリットには、ストレスの軽減や個人の自由時間の確保、ライフスタイルの調整が挙げられます。一方で、孤独感やコミュニケーションの欠如、家計の負担増加といったデメリットもあります。夫婦別居を成功させるためには、明確なルールを設け、コミュニケーションを怠らず、第三者の意見に過度に依存しないことが重要です。実際の成功事例として、芸能人の事例や具体的な夫婦の例を参考にすることも有益です。これらのポイントを押さえ、慎重に検討することが夫婦別居の第一歩となるでしょう。
別居を考える場合には、離婚なのか修復なのか、先の方向性を見極める必要があるため、夫婦問題カウンセラーへご相談されることをお勧めします。
ずっとハッピーが続くマリッジライフ応援
ティダテラス 照子