夫婦問題カウンセラーの三枝照子です。
私の元に夫婦の問題のことで相談にいらっしゃる方の9割方が、セックスレスの問題を抱えていると言っても過言ではありません。公の場でも、夫婦の間でも、この話題に触れることにも抵抗があるのが現実で、セックスレスの期間が長くなればなるほど、問題は深刻になっていく傾向があります。本音では、セックスしたいと思っているのに、言い出せない、タイミングが合わない、断られると傷つく、だからセックスできない、という状況が伺えます。
離婚事由の中に「セックスレス」は必ず入ってきます。公に多く語られることは少ないけれど、夫婦とってセックスレスは深刻な問題です。
この記事では、30代夫婦のセックスレスの現状と原因を詳しく解説し、関係修復のための具体的な方法を提案します。セックスレスに悩む多くのカップルが直面する心理的・身体的要因を理解し、コミュニケーションの改善や新しいアプローチの導入など、実践的な解決策を考えます。また、長期的な関係修復のためのヒントも紹介し、信頼関係の再構築や持続可能な解決策の立て方についても解説します。この記事を読むことで、セックスレスの問題に向き合い、パートナーとの絆を深め、健全な夫婦関係を取り戻すための具体的なヒントを知ることができます。単なるエロティシズムのお話しではなく、統計データも交えながら、読者の皆様に寄り添った内容となっています。
1. セックスレスの現状と原因
1.1 30代からの夫婦のセックスレスの現状
1.1.1 統計データとトレンド
セックスレスの定義とは、「特殊な事情が認められないにも拘らずカップルの合意した性交あるいはセクシュアル・コンタクトが1ヶ月以上なく、その後も長期に亘ることが予想される場合」のことを言います。近年、夫婦のセックスレス問題が深刻化しているデータがあります。日本性教育協会の調査(2020年)によると、婚姻関係にある男女の約51.9%がセックスレス状態にあると報告されています。この数字は10年前と比較して約10%増加しており、現在では約半数がセックスレスになっているとすれば、社会問題として深刻なのではないでしょうか。
さらに1年以上セックスしていないカップルの割合も平均して男性約40%、女性約50%となっています。このデータの中で30代カップルに注目してみると、30代男性の77.6%、30代女性の57.3%がセックスしたいと思っているという統計がありますが、年に数回のセックスかまたは1年以上セックスしていないと答えた30代男性は51%、30代女性は49.5%なのです。本当は男女双方ともセックスしたいのに、実は半数がセックスレスという現実をどう考えたら良いのでしょうか?
年代 | セックスしたいと思う | 実際はセックスレス |
---|---|---|
30代男性 | 77.6% | 51% |
30代女性 | 57.3% | 49.5% |
このデータは日本性教育協会の公式サイトで詳しく確認できます。
40代になると、男性がセックスしたいと思っている人の割合が増加するのに対し、女性がセックスしたいと思う女性の割合が減っていきます。男性では40代をピークにだんだんと意欲が下がり、女性は20代をピークに下がっていくことを単に、体の衰えや更年期と結論づけるのは、表面的で全く問題解決に向かわない論理だと思っています。
1.1.2 統計上のセックスレスの理由
日本家族計画協会の調査によるとセックスレスの理由として、
- 相手が応じてくれない
- 面倒臭い
- タイミングが合わない/仕事で疲れている
- 男女というよりは家族になってしまっているから
などが上位にあがります。これらの背景として、こんな事情が見えてくることもあります。
- 共働き夫婦のケース:夫も妻も上昇志向。キャリアを追求し常に目標を持って生きることが夫婦の掟となり、自分を労うことを後回しにしてしまう。仕事優先のあまり、帰宅後は疲労困憊で性生活どころではないと語ります。
- 子育て中の夫婦のケース:夫は出張がちで仕事優先、半月は不在。子育ては妻ワンオペのため、夫は深夜帰宅時で妻を起こしては悪いと思いやるが、妻はいつ帰るとも当てにならない夫を待つよりも、子育てに果てて寝てしまい、すれ違いが起こっている。
- 価値観の違いによるケース:夫はセックスを重視するが、妻はそれほど必要性を感じておらず、意見の相違が生じています。
1.2 原因の把握
1.2.1 心理的な要因
セックスレスの心理的要因は多岐にわたります。主な原因として以下が挙げられます:
- ストレスや不安
- 自己肯定感の低下
- コミュニケーション不足
- 性的欲求の不一致
- 過去のトラウマ
特にストレスは性欲減退の大きな要因となります。日本性科学会の研究によると、仕事や家庭でのストレスが高い人ほど、性的興味や欲求が低下する傾向にあることが明らかになっています。
また、自己肯定感の低下も重要な要因です。自分の身体や性的能力に自信がない場合、パートナーとの親密な関係を避ける傾向があります。
1.2.2 身体的な要因
身体的な要因も30代夫婦のセックスレスに大きく影響します。主な身体的要因には以下があります:
- ホルモンバランスの乱れ
- 慢性疲労
- 生活習慣病(糖尿病、高血圧など)
- 更年期症状の早期発症
- 性機能障害(ED、膣痛症など)
特に30代後半からホルモンバランスの変化が始まり、性欲に影響を与える可能性があります。女性の場合、エストロゲンの減少が始まり、男性はテストステロンの減少が徐々に進行すると言われています。
1.2.3 ライフスタイルの変化
30代は人生の転換期でもあり、ライフスタイルの大きな変化が訪れる時期です。これらの変化がセックスレスの原因となることも少なくありません。
- 仕事の忙しさ:30代は多くの人がキャリアの中核を担う時期です。長時間労働や責任の増大によるストレスが、性生活に悪影響を及ぼします。
- 子育ての負担:30代は出産や育児の真っ只中の年代でもあります。子供の世話に追われ、夫婦の時間が取れないことも多くなります。
- 経済的プレッシャー:住宅ローンや子供の教育費など、経済的な負担が増える時期でもあります。金銭的な不安がストレスとなり、性生活に影響を与えることがあります。
- 生活の慣れ:結婚生活が長くなると、お互いへの新鮮さが失われ、性的な魅力を感じにくくなることもあります。
これらのライフスタイルの変化は重要な要因として指摘されています。特に、仕事と家庭の両立に悩む30代夫婦が増加しており、そのストレスが性生活に大きな影響を与えていることが明らかになっています。
以上のように、30代夫婦のセックスレスには様々な要因が複雑に絡み合っています。これらの現状と原因を正しく理解することが、問題解決の第一歩となります。次章では、セックスレス解消のための具体的なアプローチについて詳しく見ていきます。
2. セックスレス解消のための初めの一歩
2.1 セックスについての男女のギャップ
セックスレスの解消には、まず男女間のセックスに対する考え方の違いを理解することが重要です。多くの場合、この認識のズレが問題の根底にあります。日本性教育協会の公式サイトの「セックスに関する悩み・コンプレックス」の集計によると、男性は短い時間の間に射精を終えている一方で、女性のほとんどがセックスによってオーガズムに達することができていません。このギャップが、女性がセックスをしたくなくなる大きな要因なのではないでしょうか。
2.1.1 男性中心の身勝手な「射精」
多くの男性は、セックスを単なる生理的欲求の解消や快感を得るための行為として捉えがちです。この「射精至上主義」的な考え方が、パートナーとの深い繋がりを妨げる要因になっていると考えられます。映画やアダルトビデオなどでは、男性が射精をすれば、あたかも女性もオーガズムに達しているかのように、男性本位の表現ばかりが誇張されています。セックスをリードするのは常に男性であり、求めるのは男性、男性優位のセックスが当たり前とされている傾向がありますが、それはあまりに身勝手な性行為なのではないでしょうか。
実際、上の表から、男性の射精までの間に、女性はほとんどオーガズムに達していないことが読み取れます。男性はそれでいいと思っている、女性はそんなセックスは気持ちよくないと思っている、このギャップが夫の求めに応じたくない妻の大きな理由の1つだと考えられます。
2.1.2 女性が望む「まぐわい」
さらに日本性科学会の研究によると、男性の約60%が「性行為の目的とは快楽のため」と考えているという結果が出ていますが、女性の多くは「愛情を表現するため」と精神的な繋がりや親密さを重視していることがわかります。セックスを通じて愛情や信頼を確認したい、という欲求が強いのが特徴です。
同じ研究では、女性の約70%が「セックスは心と体の繋がりを感じる大切な行為」「愛情を表現するふれあい」と回答しています。女性のこうした気持ちへの配慮に欠けた男性優位のセックスが、女性の性欲を減退させている可能性があります。実際、男性が射精しても女性は全然気持ちよくない、感じているふりをしているだけということもあります。女性が望むのは、「射精」ではなく、お互いの体と心をいつくしみ愛情を通わせる「まぐわい」によって、癒されることなのではないでしょうか。
同じ調査では、夫から求められるからセックスをしている、という受け身的な女性の姿も浮き彫りになっています。これは「性生活は男性がリードするもの」という社会通念による部分も大きいのではないでしょうか。セックスを女性から望むのは恥ずかしいことだと思う女性も多いことでしょう。けれども、「夫とは恋人の頃のような関係でいたい」という言い方で愛情を求める女性は少なくありません。
社会通念にとらわれず、ご自身の愛情表現を解放できるとしたら、それはとても幸せなことですね。
性別 | セックスの捉え方 | 重視する点 |
---|---|---|
男性 | 生理的欲求の解消 | 射精、快感 |
女性 | 心と体の繋がり | 愛情、信頼 |
2.2 コミュニケーションの重要性
とはいえ、長い期間のセックスレスを解消するには、どうしても気恥ずかしさが伴うものです。
まずは、さりげないスキンシップを大切にしていただくことから始めることをお勧めしています。例えば、パートナーを誘導するとき、送り出す時に軽く肩や背中に手を触れることや、出かける時にはさりげなく、腕を組んでみる、などです。また、夫婦で出かけた時に、テーブル席ではなくカウンターテーブルに座って話すと体の距離感も近くなりますし、話しやすいかもしれません。心理的な距離が少しでも縮まれば、パートナー間でセックスについての話し合いもしやすくなるはずです。お互いの気持ちや欲求を理解し合うことで、関係性を改善できる可能性が高まります。
軽いスキンシップから始めて、セックスについての話し合いというところまで行ければ、お互いの意思確認が進み、問題解消に向けて大きな前進になるでしょう。
2.2.1 感情を共有する
感情の共有は、親密さを深める重要な要素です。以下の点に注意して、感情を共有しましょう:
- 日々の出来事や感じたことを率直に話す
- 相手の話を否定せず、共感的に聞く
- 非言語コミュニケーション(表情、ジェスチャー)にも注意を払う
2.2.2 時間と空間を確保する
子育て中であっても、夫婦の時間を持つことを最優先事項にしてみましょう。託児サービスや実家の親に子供を預けるなどして、ホテルを利用し、非日常的な時間と空間を確保することをお勧めします。子供がいない夫婦でも、日頃の忙しさから離れて、お互いに余裕をもって心が満たされる非日常的な時間を過ごすことで、リフレッシュできたり、お互いを思いやる気持ちが生まれることでしょう。
2.2.3 相手を尊重する
力強く激しく性急なだけがセックスではありません。時には、女性優位のセックスを試みてください。ゆっくりと食事を楽しみ、入浴し、互いの肌を慈しみ大切にする、優しくて暖かいセックスを楽しんでみることをお勧めします。どちらから誘っても良いのです。自分本位ではなく、相手を満たしてあげる気持ちを優先してください。そうすることで、愛されている自信と自己肯定感や信頼感を育むことができます。「愛されている」という実感は、妻を美しく、思いやり深く変容させます!
3. 具体的な解決策
3.1 定期的なデートの設定
セックスレスの解消には、まず夫婦の絆を深めることが重要です。定期的なデートを設定することで、お互いの気持ちを再確認し、親密さを取り戻すことができます。
3.1.1 デートのプラン例
- 思い出の場所を訪れる(プロポーズした場所など)
- 新しいレストランで食事を楽しむ
- 温泉旅行に出かける
- 映画や演劇を鑑賞する
- アウトドアアクティビティに挑戦する
これらのデートは、日常から離れてリラックスし、お互いに向き合う時間を作るのに効果的です。ホテルや温泉旅館での滞在は、特に心身をリフレッシュさせる良い機会となります。
3.1.2 効果的なデートのルール
- スマートフォンの使用を控える:お互いに集中して会話を楽しみましょう。
- 仕事や家事の話題を避ける:デート中は日常から離れることを意識しましょう。
- 相手の話に積極的に耳を傾ける:傾聴の姿勢が大切です。
- 褒め言葉を意識的に使う:相手の良いところを見つけて伝えましょう。
- 新しい体験を共有する:思い出作りを心がけましょう。
3.2 性生活の工夫
セックスレスを解消するためには、性生活そのものに対する工夫も必要です。女性が誘ってはいけない、という「思い込み」を外して、好きな香りのアロマを焚きオイルマッサージを行ったり、玩具の使用など、恥ずかしさを乗り越えてチャレンジしてみてください。マンネリ化を防ぎ、お互いの興味を再び喚起することが重要です。
3.2.1 新しいアプローチを試す
アプローチ | 説明 | 効果 |
---|---|---|
場所の変更 | 寝室以外の場所で試みる | 新鮮さと興奮を感じられる |
時間帯の変更 | 朝や昼間に試みる | 日常のリズムを変え、新しい感覚を得られる |
ロールプレイ | 異なる人物になりきってみる | 羞恥心を和らげ、新しい自分を発見できる |
アロマセラピー | 香りを使ってリラックス | 気分転換とリラックス効果が得られる |
コミュニケーションを取りながら、お互いが心地よいと感じるアプローチを見つけることが大切です。パートナーとのオープンな対話が性的満足度の向上につながるとされています。
3.2.2 共通の趣味を増やす
性生活以外の場面でも親密さを深めることは、セックスレス解消に効果的です。共通の趣味を見つけ、一緒に楽しむ時間を増やしましょう。
- 料理教室に参加する
- ダンスレッスンを始める
- ガーデニングを楽しむ
- スポーツジムに通う
- 写真撮影を楽しむ
これらの活動を通じて、お互いの新しい一面を発見し、会話の話題も増えます。
3.2.3 注意点
セックスの頻度やタイミングは強制せず、お互いの意見を尊重することが大切です。また、個人の時間も大切にしながら、バランスを取ることを心がけましょう。
これらの具体的な解決策を実践することで、30代夫婦のセックスレスを解消し、より深い絆を築くことができます。重要なのは、継続的な努力とコミュニケーションです。一朝一夕には解決しないかもしれませんが、羞恥心を乗り越えて、粘り強く取り組むことで、必ず関係性の改善が見られるはずです。
5. まとめ
30代夫婦のセックスレスは、決して珍しい問題ではありません。今や、結婚したカップルの半数がセックスレスに陥っている深刻な事態です。原因は様々ですが、心理的要因、身体的要因、ライフスタイルの変化が主な要因として挙げられます。
解決への第一歩は、お互いの気持ちを理解し、オープンなコミュニケーションを取ることです。定期的なデートや新しい趣味の共有など、二人の時間を大切にすること、さりげなく肩に触れたり腕を組むなどのスキンシップが効果的です。性生活の改善には、男性優位の「射精」中心から、相手を尊重する「まぐわい」を重視する姿勢の変化が大切です。長期的な関係修復には、信頼関係の再構築と持続可能な努力が欠かせません。セックスレスの解消は一朝一夕にはいきませんが、互いに努力を重ねることで、より深い絆と満足度の高い関係を築くことができるでしょう。男性優位にせよ、女性優位にせよ、相手から「奪う」セックスではなく、相手に存分に「愛情をシャワーのように与える」セックスを心がけてください。専門家のアドバイスを求めることも、解決への有効な手段の一つです。
ずっとハッピーが続くマリッジライフ応援!
ティダテラス 照子
ストリートアカデミーでの講座へはこちらからどうぞ